木鶴人記

モッカクジンキ

主題:3DCADを用いた社寺建築の設計手法を再考する

1. 富士山本宮浅間大社

1-13.後書き

 浅間造と言いますと、拝殿・翼殿・幣殿・本殿が一体化し、これらの単層の社殿の上に流造の本殿を無理矢理乗せて二階建てにしたような奇抜な印象がありました。 しかし絵図によると当初は二層の本殿が独立して建てられていたことがわかります。後に幣殿を増設して拝殿・翼殿と一体化し一つの社殿となりました。 当初の独立した本殿の姿は上下に向拝を持つかなり特異な社殿でしたが、極めて良く考えられた上に独特なバランスを持つ美しい社殿であったと思います。 上層の向拝は神様専用の出入り口、下層の向拝は人間の出入り口、と出入り口を明確に分けたことがこの社殿の肝であったと思われます。

 今回の本殿の3D化は肝心な部分が不明確な絵図を、あくまでも個人的な想像力で補って起こしたものでやはり正確さに欠けるものです。 ただ年代的な構法からはそんなに離れていないと思います。 個人的な意見を述べますと下層向拝の柱間三間飛ばしはやり過ぎの観があります。とはいっても二層の向拝という点ですでにやり過ぎなので納得するしかありません。

 今回、古本屋にて貴重な浅間大社の修理工事報告書を購入することができ、その中あった絵図の独立した本殿の姿に心を引かれ3DCADにて起こすことを思い立ち、その後かなりの月日を費やして、この造営当初の “徳川家康公の仰ぎ見た富士山本宮浅間大社本殿の御姿” を自分なりの解釈を加えて再現いたしました。造営当初の御姿を還りみる一助となれば幸いです。